ペアレント・トレーニングは、子どもを養育している親に子育てスキルを身につけてもらい、子育てストレスの軽減、子どもの発達促進および不適切な行動の改善を目指す心理教育プログラムです。アメリカでADHDの子どもを持つ親に行われていたものが、1990年代に日本に導入され、2017年には厚生労働省の後押しもあって、全国で自治体を中心に実施されてきました。
解説
ペアレント・トレーニングの考え方
ペアレント・トレーニングは、行動理論(応用行動分析)に基づいています。行動理論では、「強化された行動は増える」と考えます。ペアレント・トレーニングはこの考え方を応用し、子どもが欲している“注目(=強化)”を与えることで、子どもの適切な行動が増えると考えます。
ペアレント・トレーニングの基本的な技法
人はだれでも他者からの注目を必要としています。まして子どもは親からの注目がなければ生きていけません。ところが親は、子どもが好ましい行動をしている時には「あたりまえ」と思ってしまって注目を与えず、不適切な行動をしている時には「否定的な注目(叱る)」を多く与えてしまいがちです。日頃からほめてもらう経験が少ない子どもは、わざわざ不適切な行動をして、親に注目してもらおうとすることさえするかもしれません。そのようなケースでは、親が子どもを叱っても子どもの不適切行動は修正されないばかりか、親子関係が悪くなる可能性も十分に考えられます。一方、ほめる関わりを多くもらった子どもは、自尊心が高まり、親を信頼するようになり、親子関係も気持ちが通い合って指示が通りやすくなることが期待できます。
ペアレント・トレーニングでは、子どもの不適切行動には注目を与えずに無視し、並行して適切な行動をほめる関わりを積極的に増やすことを親に学んでもらいます。
ペアレント・トレーニングの内容
ペアレント・トレーニングは5~10回のセッションで実施されます。各セッションは、①講義 ②ロールプレイ ③宿題 から成っており、参加者が体験的にスキルを身につけることができます。また4~6人程度のグループで行われるため、メンバーで子育ての悩みを共有したり、他のメンバーの言動から気づきを得たり、といったメンバーとの相互交流から生まれる学びが期待できます。
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対象となる年齢
子どもを養育している親や家族が対象です。子どもの年齢は、およそ3歳から小学校中学年までとするプログラムが多いですが、思春期の子どもの親を対象にしているものもあります。
対象となる問題
やるべきことに取り組まない、切り替えに時間がかかる、大人の指示に従わない、などの子どもの困った行動に対して、親はペアレント・トレーニングで身につけたスキルを用いて関わることができるでしょう。
参考ページ
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=4000x3000:format=jpg/path/s908c827b392a8aad/image/i3990c52466ced65b/version/1616902775/%E3%83%9A%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88-%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B.jpg)